小説の技巧

今、【小説の技巧(デイヴィッド・ロッジ著、柴田元幸・斎藤兆史訳、白水社)】という本を読んでいる。

小説を書いたり読んだりする上での共通理解事項とされる技法上の概念や手段を叩き込んでくれる本だ。

有識者にとっては共通理解事項かもしれないが、私には目からうろこの連発だった。

しっかりと読み込めば、同じ小説から得られる気づきなどの情報量を増やしてくれるだろうし、自分で何か書こうと思う時も非常に役立つだろう。

【書き出し】、【作者の介入】、【視点】、【名前】ほか50の切り口で小説の技法を教えてくれる。

私も本は好きなので例えば【視点】でいえば、主人公の視点で主人公自らに語らせる小説や第三者の視点で情景描写するタイプの小説などいろいろな視点で書かれた小説の形式を読んだことはあったが頭の中で体系的に整理されていなかった。

途中で視点がずれた時にいかに小説の世界観を崩すかなどの記述もなるほどと思った。

【書き出し】は読者を作者の作る世界に引き込む役割を果たしているが違和感なく作者の作る世界に引き込むための技法などもためになった。

登場人物の名前だったり小道具だったり、小説を書く上で当然必要となり一つ一つ決めなければならない決め事のあらゆる部分で強烈な意思がはたらいてこだわりを持って書かれていることがよく分かった。

勉強になった。

今日の写真は【小説の技巧】。

年末に良い本に出合った。

目的なく本屋を訪れて本棚に並んでいる中から本を手に取ることはよくあることだが図書館はやはり本棚の多様性に厚みがある。

【創作の極意と掟(筒井康隆)】を読んで

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ブログを書き始めてから言葉の正確な使い方が気になって、うろ覚えの単語を使う時など意味を確認してから書くようになってきた。

さらにうまい文章のコツなどにも興味を持つようになった。

参考にしようと借りてきたのが筒井康隆の【創作の極意と掟(講談社)】である。

3週間ほどまえに三重県立図書館から5冊ほど借りてきた中の一冊だが先ほど読了した。

【凄み】や【色気】などの小説に必須の要素で、かつ作者の体験がにじんでくることや【薬物】、【電話】といった子道具類に関する考察、【語尾】などの作文技術的なものまで小説が具備すべきことが盛り込まれていて非常に面白かった。

著者の意見として、よき作家は古典、哲学などへの素養、文法などの作文技術、濃密な人生体験の3つが必須であるとの印象を受けた。

小学校から55歳の今にいたるまでの人生を振り返った時に、本一冊分くらいの体験はしてきたように思う。

人が昔から悩んできた古典的命題と比較しながら自分の体験を語り、適切な作文技術で表現すれば多少は読ませることができるのではないか?

札幌で過ごした大学時代、夜を徹して飲んだ薄暗い明け方帰路の途中、真冬の大雪でアスファルトの道路も雪が降り積もり、一面真っ白の中に24時間営業のコンビニエンスストアのあかりだけがぽつんとともる中、チェーンを巻いたトラックがサンタクロースの橇のようにシャンシャンシャンと音を鳴らしながら走っていく姿を見て、この風景を文章に出来れば一冊は本が書けるなと考えていたことを思い出した。