
私の勤める会社から少し離れたところに山がある。
直線距離で200mほど。
目の前から山裾が立ち上がり、そのまま奥へと山頂に向かっている。
植林されたスギが主な樹種で、手入れをしなくなって長いのか、春にはちらほらと桜が咲く。
私のオフィスは3階にあり、パソコン作業で目が疲れると、山の緑で疲れた目を休めている。
夏の間は、ずっとセミの声を聞きながらの勤務である。
梅雨の前後からニイニイゼミが「チーッ、チーッ」と鳴き始めて、夏が進むにつれて、クマゼミ・アブラゼミへと主役が変わっていく。
家の近所では、ミンミンゼミも鳴いているが、何故か会社の窓からは、あまり聞こえてこない。
お盆休みが終わり、少し涼しさを感じるようになってから、ツクツクボウシが「ツクツクホーシ」と鳴く声が響くようになった。
セミというと、地中で何年間も過ごしたあげくに、成虫としてのわずかな期間を過ごすということで、儚さの象徴のように語られることも多いが、クマゼミやアブラゼミによる、耳も割れんばかりの大音響からは、太く短く全力投球という感じで、むしろ力強い。
クマゼミたちの鳴き声が消えて、ツクツクボウシが鳴き始めると、いよいよ秋がきたという感じがする。
若い頃は、過ごしやすい季節に変わることを、ただ歓迎していたが、夏から秋へ向かう、切なさや儚さを少し感じられるようになった。
やがて、ススキ野原からコオロギやキリギリスの鳴き声が聞こえてくるだろう。
青春、朱夏、白秋、玄冬。
今は、白秋のまっただなか。
実りを収穫する時期であり、冬への準備をする時期でもある。
自然はよい。
移り変わりを眺めているだけで、いつも詩人っぽい感慨を与えてくれる。
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