
お酒が好きで、「酒は百薬の長」という言葉を言い訳に、周りから早死にするぞと言われながらも、実に良く飲んでいた。
大規模な疫学的調査の結果、最近では、「健康面だけを考えるなら、お酒は一滴も飲まないのがベスト」という知見が主流になっているらしい。
科学の世界では、「ヤマカガシには毒がない」などのように、頭から信じ込んでいた常識がひっくり返ることがあるが、アルコールに関しては、その可能性は限りなく低そうだ。
アルコールが分解されるときにできる、アセトアルデヒドによる発がん性のメカニズムが分子レベルで解明されており、がんの種類によっては飲む量に比例してストレートにリスクが上昇するらしい。
とはいえ、自分の実感とは異なる部分がある。
身体的な病気のリスクとの関連では、何一つよいことはなかったとしても、人見知りだった若い頃の自分が、社会に溶け込むためのコミュニケーションの潤滑油として、仲間作りに貢献してくれたし、お酒を通じて獲得した人間関係が、現在にいたるQOLを底上げしてくれていることも事実である。
ストレス解消効果が、間接的に免疫力を高めて、結果的に長寿につながる、アルコールの害を補って余りある効果が、醸造酒の発酵由来成分で発見される可能性もある。
もちろん、これらは現時点では私の推測にすぎない。
「コレステロール値が上がるから、卵は一日一個まで」と言われていた頃、私はどこか腑に落ちなかった。
そして実際に知見は変わった。
この経験があるからこそ、私は科学を疑うのではなく、科学は更新され続けるものだと思っている。
若い頃のような無茶な飲み方では、早死にするかもしれない。
しかし二日酔いにならない程度のお酒を愉しむこと(これが難しいのだが)は、健康に悪くないと信じながら、一生付き合っていきたい。
「私の体質では飲酒した方が長生きできる」
この仮説を、自分自身の人生をかけた実験で、確かめていこうではないか。
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