黒歴史じゃなかった~必殺仕置人と山﨑努~

祖父母と同居していたせいもあって、よく時代劇をみていた。

一家団欒の場である祖父母の部屋にあつまって、「水戸黄門」、「大岡越前」、「銭形平治」に代表される、わかりやすい勧善懲悪ものをみていた。

子供だった私たち姉弟に対する教育的配慮もあったのかもしれない。

早寝早起きの家族で、22時には家中の明かりが消えていたような記憶がある。

私自身は、小学校高学年くらいから、ラジオの深夜放送などで、少しずつ夜更かし癖がついていた。

祖父母の部屋とは別に、居間にも小さなテレビがあって、遅い時間のテレビは、部屋の電気を落として、ボリュームも小さくして見ていた。

チャーリーズエンジェル、熱血弁護士カズなどの外国物に加えて、その中に、新必殺仕置人があった。

必殺シリーズの中でも屈指の傑作と評価が高い同作に夢中になった。

藤田まことと山﨑努がとにかく格好良く、日野正平など周りの役者たちも粋で、最終回は、「あんたの思った通りだよ、諸岡さん」など一連のセリフまで暗記していた。

ビデオのなかった時代、再放送を見つけては、かなり無理してでもテレビの前に座るようにしていた。

私の人格形成にも結構影響を与えたドラマなのではないかと思っている。

その後も役者として順調にキャリアを積み重ねた山﨑努が、2022年に日経新聞で「私の履歴書」の連載を始めた時は、どんなつもりで「念仏の鉄」を演じていたと語るのか非常に楽しみにしていた。

ところが、劇団や映画の話に終始してしまい、テレビドラマの話は少なく、「必殺仕置人」については触れられることもなかった。

私の大好きな「念仏の鉄」、必殺仕置人が彼にとって黒歴史だったのだろうか?

悲しい気持ち、もやもやとした気持ちをいだきながら最終回を迎えた。

今日、黒歴史というキーワードで色々と調べている時に、ふと思い出して、山﨑努にとっての「必殺」、「念仏の鉄」を調べた。

作品や役に対する向き合い方、熱い思いを語った記事が沢山見つかり、彼にとっても大切な作品だったことが伝わってきた。

「私の履歴書」という、1ヶ月限定で幼少期から自分の人生を語るという縛りがある連載で、黒澤明に見いだされた出世作「天国と地獄」などと比較して、人生のターニングポイントとなる作品ではなかっただけなのかもしれない。

調べてみてよかった。

救われた気がした。

念仏の鉄は、やはり格好良かった。

60歳にして、あらためてそう思う。

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